最近の新薬

医療現場における薬の役割には大きなものがあります。
財団法人ヒューマンサイエンス振興財団は5年おきに医療ニーズ調査を実施してきています。
そこでは60の疾患ごとに治療満足度と、治療にあたっての薬の寄与度について医師を対象にアンケート調査を行い、取りまとめています。
公刊されている最近のデータは2005年秋に実施された調査結果ですが、それによると治療満足度を決定している主要な要因は「薬の寄与度」となっています。 つまり、安全で効果的な薬の開発が治療の満足度を高める上で不可欠であることが示されています。
ここでは、ヒューマンサイエンス振興財団が行っている医療ニーズ調査に沿って、60の疾患ごとにここ5年の間に開発された新薬を紹介していきます。
新薬は、新薬の承認審査報告書の全文を編集し,データベース化した(財)日本医薬情報センター( JAPIC ) の「日本の新薬−新薬承認審査報告書DB−」(日本の新薬DB)から体系的に抽出し、 新薬の添付文書およびインテービューフォームからの情報を付加しています。
完成までは長い長い道のりですが、ゆったりと歩んでいきましょう。(2011年1月28日)

(1) HIV・エイズ
 2005年秋の調査結果によるとHIV・エイズは薬剤貢献度も治療満足度も低い水準にありました。この5年で各種新薬が上市されてきています。
効能・効果「HIV感染症」として、ダルナビルエタノール付加物(プリジスタ:2007.12)とマラビロク(シーエルセントリ:2009.1)が、 効能・効果「HIV-1感染症」としてはラルテグラビルカリウム(アイセントレス:2008.7)とエトラビリン(インテレンス:2009.1)が販売開始されています。
ダルナビルエタノール付加物はプロテアーゼ阻害薬である。マラビロクはCC受容体5阻害薬です。ラルテグラビルカリウムは日本で初めてのインテグラーゼ阻害薬です。 エトラビリンは非核酸系逆転写酵素阻害薬です。
患者は抗HIV薬を生涯飲み続ける必要があり、薬剤耐性化や長期毒性の問題を回避するため、常に新たな薬剤の開発が望まれています。 その意味で、この5年は「前進した5年」といえるのではないでしょうか。(2011年1月28日作成)